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卒業生の皆さんへ

家から駅まで20分ほど。会社の最寄駅から事務所まで10分ほど。
その往復でだいたい最低でも1日60分は歩いている。
道端でささやかな四季の変わり目や人生の岐路と出会う。それが好きだ。
この1週間、たくさんの卒業式に向かう学生や幼稚園児に出会う。
3月は卒業式の季節だ。

大学で講師をやるようになったり、会社にインターンが来たり、
自然と学生の友達が多くなる。10個ほどの歳が離れた友人だ。
年上だから偉いとか、敬語とか、そういうものが僕は苦手で
少し先に冒険に出かけたくらいの人でいい。

あそこの沼は底なし沼だ!とか、その戦いには薬草を持っていけ!
とか、そんなことを教える程度。10歳の差なんて実はたいしてない。
なので教えれることも限られている。歯磨いて寝ろよ!くらいに近い。

今、卒業していく学生たちと同じように僕にも卒業した頃があり、
学生の頃、お世話になったカッコイイ大人たちは「おめでとう」ではなく
「ようこそ!」といった。今、思える。卒業式に僕らは「ようこそ」という言葉を送りたいと。

大学生活までが今の日本ではなんとなく義務教育っぽい。
ある程度の選択権は与えられつつも、本当の責務を追うのは卒業してからだ。
これから先、卒業した皆が持ってるものは唯一「自由」であるということ。
驚くほど自由だ。そして、驚くほど金がない。それでも自由であることに変わりはない。
うまい飯食おうが、良い家に住もうが、牛丼で済ませようが、ボロ屋に住もうが、
その選択は誰のものでもない君たちのものである。

生きやすいように学びやすいように今まで親や学校が多くのプログラムを用意して
自分にあった学びを提供してくれた。でも、今はもうない。誰の後ろ盾もなく、自分自身の足で立つ。
しっかり働け、大きく稼げ!とかではない、世界を放浪しようが、会社で死に物狂いで働こうが、
四六時中、家でゴロゴロしようが、それは君が決めた自由だということだ。

生き方に正解はない。それは人それぞれの正しさと欲望と怠惰さを持ち合わせてこそ一個人だから。
なので卒業した君たちは、君たちの魂が赴くままに生を謳歌することになる。
大成功もあれば、大失敗もあるだろう。波風立たぬ日もあるだろう。思ってた未来と違うと嘆くこともあるだろう。

何事も予想どうりに、希望どうりに、願いどうりに行かない。
それは10年先に冒険を始めた僕が言えることだ。
ただ、遠回りしようが、転んで怪我をしようが、「こうありたい」と願う気持ちは、
いくら時間がかかっても、必ずその場所へ連れて行ってくれる自由の切符です。
その切符は誰もが必ずもっているし、僕も胸ポケットにこっそりしまっている。
誰の手助けもなく、自分だけの力で生きていくときに渡される切符。

あまりに自分の力が未熟で打ちのめされることもあると思う。
先にいっておく。今年の夏頃には一発ぶん殴られたくらいのショックはあると思う。
だって、僕ですら10年。さらにはもっと長い間、同じように自由の切符を手に入れて歩き出した人たちが
わんさかといるのが、こちらのステージだ。猛者だらけ。無数の生き方を見るだろう。
それが次の君たちの教科書だ。

まだ君たちの切符に行き先が書かれていないものもあるだろう。
焦ることはない、ふとした時に切符に行き先が書かれている。自分で見つけるものではないのだと気づくこともあるだろう。友達が行き先決まってるからといって何一つ急ぐことはない。
今目の前の電車に乗れずとも、次の電車は必ず来る。しっかりと自分の胸元に切符があることだけを忘れずに過ごすのだ。

どうしても、なにをしてもうまくいかない時がある。
そういう時は誰だって必ずある。学生時代には味わったことのない屈辱もあるだろう。
そういうときは飲み屋にいって、度のキツイ酒でもくらって「ちくしょうめ」と一夜を過ごせ。
次の日には、それが君の原動力となるだろう。

毎日、誰かの文句をたれたり、不満ばかりを口にするようになったら、
一度、冷静になれ。銭湯にでもいって、素っ裸のただの人になり、自分自身を見つめ直すのだ。
文句や不満は、たいてい自分自身が問題だったりする。忘れるな。
何か状況を変えるときには、周りを変えるのではなくまず自分が変わることだ。
そうやって周りが君の変化に気づいて、状況が変わる。すごくシンプルだ。

そして、いつか何もかもうまくいかなくなってダメになりそうになったら、
そのときは学生時代の仲間や俺みたいな講師ぶったやつらのところへ走りこめ。
人に頼ることを決して忘れず。そして頼られたら君の出来る限りをつくせ。
君たちが学生の頃に出会った仲間は、生涯の仲間だ。

僕とつながりある卒業生のみんな。そして、これをたまたま読んだ人も。
ようこそ。やっと君たちのターンです。10マスほど先で待っています。
たった10年の差で自慢できることは楽しいお酒の飲み方くらいやわ。

Subaru Matsukura

AUTHOR

松倉 早星(Subaru Matsukura)

ovaqe inc.代表 / CNTR編集長 / MNRVファシリテーター
1983年、北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。 東京・京都の制作会社にてプランナーとして在籍。
2011年12月ovaqe inc.設立。領域を横断した多数のプロジェクトに携わる。
http://ovq.jp/
http://subarumatsukura.com/

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