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自ら選んだ道は、自らでしか示せない。

どでかいサングラスをしたピチピチのワンピースを着た若めな女と
扇子をパタパタと仰ぐ胡散臭いおじさんが人生の話をしている。
女がおじさんに人生相談してるようで、実は女はさほど相談したいことなどない。

そんな空気がサングラスに隠された顔から滲み出ている。
相談しとけば、このおじさんは満足するのだ。頼られたいのだ。
片方が上の空なキャッチボールみたいだ。

相槌の節々に、女にそもそも悩みなどない
あっけらかんとした感情が混ざっている。おじさんは気付かない。
僕らが経営会議をしてる後ろの席でのことだ。
僕らは声を潜めて内々の計画を語る。

おじさんと女は先に景気良く喫茶店を出て行った。
昔、職場だった会社が近い、五条烏丸の喫茶店。会議は何故かいつもここの奥の席。
打ち合わせを終え、歩きながら、これからの立ち回りの解像度を上げていく。
雇われていたときには考えなくてもよかったクリエイション以外の有象無象は、
僕ら作り手が何も考えずにものづくりに打ち込めるように
経営陣が恐ろしい努力をしていたのだと痛感する。
あらためて、尊敬と感謝である。

五条から京都駅まで、
まだ暗くなる手前、歩いて帰る。
考え事には歩くのが一番だ。
まだ修復の終わらない東本願寺と修学旅行の学生の群れ。
夕日が恐ろしく赤く、京都がオレンジ色に染まっていた。

さして、それを美しいとも思わなかったのは
たぶん、小豆島でそれ以上の美しい世界を見たからだろう。
本当に美しい夕焼けは赤と青が言葉では表現できない見事なレイヤーで混ざり合い名前もない究極の中間色がそれらをつなぐ。
空の赤と海の青。風と波の揺らぎが色以上の存在を動きを持って生み出す間の世界がある。

独立していても、独立していなくても、
人が普通に毎日を重ねていれば、どこかで「あなたはこれからどこへいくのか?」
そんな問いかけで足を止めることがある。

自分たちで会社を経営していると、少なくとも年に1回そういう瞬間がある。
それをしくじるとドボン。僕らは生まれて間もない赤子のようなものなので
些細なことで足元をすくわれる。

右の道、左の道、どちら?
ではない。
360°の風景に、道などない荒野に、僕らは突っ立ているようなもので
看板もない。保証もない。えーっと、たぶんあっち!くらいの感じだ。

そうなるともう野生と理性は一緒くたになって思考を回転させるほかない。
心が赴く先に進む野生の判断と
背負ったリュックに詰まった食料を確認して何日進めるかの理性。
おばけでいう前者が松倉で後者が薩川だったりしたが、
さすがに4年以上パートナーとしてやっていると、うん、こっちだ。となる。

その道が間違っていても、正しかった道に強引にでも整地する力も必要だ。
そもそも、このどちらへ進むかという問いに答えなどなく
選ぶ人間の強さをもって、その正しさを示すしかない。

そもそも会社を立ち上げた時もそうだった。
自分たちが「正しい」と思うことを証明しよう。
そう思っての起業であった。

これからまた、知らん道をガツガツ進まなければいけないなぁ。
気がつけば電車で、真っ赤だった夜空は、暗闇に沈んでいた。
むしろ、その暗闇こそが僕らが進もうとしてる何の保証もない未来みたいで
そこにどれほどの光を灯せるのか、それを問われている気がした。
結論、人は頑張ること以外でしか、何かを証明することはできないのかもしれない。
頑張るなんて言葉、なんて解像度が低いんだ。結果で示すしかない。

自ら選んだ道は、自らでしか示せない。

Subaru Matsukura

AUTHOR

松倉 早星(Subaru Matsukura)

ovaqe inc.代表 / CNTR編集長 / MNRVファシリテーター
1983年、北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。 東京・京都の制作会社にてプランナーとして在籍。
2011年12月ovaqe inc.設立。領域を横断した多数のプロジェクトに携わる。
http://ovq.jp/
http://subarumatsukura.com/

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