editor

“現実に目を閉ざすものは、未来に盲目である”

blind

「現実に目を閉ざすものは、未来に盲目である」

これはYUKIHIRO SHODAさんが震災後に制作したショートフィルムの最後に出てくる言葉。
誰かの名言ではない。この映像の伝えたかったメッセージであるが、僕は今だにずっと脳みそに焼き付いている言葉のひとつだ。

ここに映像をおいておく。ぜひ、見てもらいたい。

blind from YUKIHIRO SHODA on Vimeo.

なぜ急に映像のレコメンド?と思うかもしれない。
明後日から大学の講義が始まるからだ。
そして、おそらく受け持つ生徒ごとに「表現を観察・分析する」講義を行っている。
そして、毎回こちらの映像を生徒に見せている。

5分17秒の映像にどれだけの考えと工夫があるか。
そして、何を伝えようとしているか。それを伝えるためにどんな演出をしているか。
たった5分の映像の中に何度も見返すと気付きがたくさんと出てくる。
普通の人はネットでこの動画を見て、一度見て良ければシェアして、次に見る機会はいつだろう。あるのだろうか。

このメッセージを伝えたいがために積み重なった創意工夫を読み解く。
なぜ、この映像を見せているかというと伝えたいメッセージに対して、言葉が極限まで削ぎ落とされていて、視聴者が自然と意図を汲み、メッセージまで誘っている構成が素晴らしいから。

そして、改めて生徒と見る。カラスの目が複数ある。女子高生のガスマスクがデコられてる。物語の大筋とメッセージを受け止める。そして、再度見る。映像の中に出てくる広告。物語の時系列。少女が立つ壁画の意味。最後、主人公の周辺の人はマスクをしてない意味。

だいたい3回あたり。
1回目は大筋と大きな表現のポイントを理解する。
2回目は細かな演出やその意味に気づく。
3回目に大きな流れと細かい演出の繋がりに驚く。

3回目あたりになると、作り手の思想が手に触れる感覚が生まれる。
同じ映画を3回ほど見たらいいと思う。僕は学生時代に運良く是枝監督が先生でこの工程を繰り返す講義にずっと出席していた。ここで得られる能力は「分析力」と何より大きいのが「解釈力」であると思う。

今、自分が見ている風景や表現をただ楽しむだけではなく、そこで考察すること。
そして、それをもう一度分析すること。それを繰り返すことで初回に見た感情がどのように設計されているのかが分かってくる。センスもあるだろう。ただ、その根底には作り手の深い思考と工夫が感じられる。それを感じることができれば、作り手として成長しないということはないだろう。と先生は思っている。

それは魅力的なことでも、退屈なことでもベクトルの強度であって方向ではない。
何か自分の感情に波風たったならば、それが何故起きたのか?という心の目線を向けることが大切だ。教科書のまま、そのままの物事や技法をインストールしても意味がないのだ。その情報の先にある琴線に触れるところまで(特に表現者は)向き合わなければいけない。それがデザイナーでも、アーティストでも、エンジニアでもだ。

そして、講義では特に触れないが4回目を見るとする。
その時は、もしかしたら映像を見てはいないのかもしれない。
僕が共感したのは、この映像を学生に見せることの意味である。
最後の一節の言葉が、学生であり、常に前に進もうと思う人にとって、
僕は答えのような気がしている。

「現実に目を閉ざすものは、未来に盲目である」

大小様々な困難が人にはあるだろう。
大人でも学生でも、それは人として同じだろう。
その時、あなたは目を閉ざすか。目の前の事実をしっかりと見つめるか。
そういうことも教えてくれる。さて、明後日はなんの講義をしたものか。

Subaru Matsukura

AUTHOR

松倉 早星(Subaru Matsukura)

ovaqe inc.代表 / CNTR編集長 / MNRVファシリテーター
1983年、北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。 東京・京都の制作会社にてプランナーとして在籍。
2011年12月ovaqe inc.設立。領域を横断した多数のプロジェクトに携わる。
http://ovq.jp/
http://subarumatsukura.com/

ovaqe inc.