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INTERVIEW : Nam HyoJun solo exhibition 「トゥエンティー・センチュリー・ボーイ」

NAM

今月9月8日を皮切りにから2ヶ月間に渡り開催されるNam HyoJunさんにお話を伺いました。
会場はHOTEL ANTEROOM KYOTO。キュレーターはCNTR編集長でもある松倉。
Nam HyoJunは上海から、そして聞き手の松倉は瀬戸内芸術祭の小豆島会場から、何度かのメールのやり取りで行われたインタビューです。
関西では「0000」(オーフォー)での活躍も記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。0000の積極的な活動の中、はじめてNam HyoJunの作品を見た際にいつか彼の個展を実現したいと思い、はや数年。今年それが実現します。
9月8日にはHOTEL ANTEROOM KYOTOでオープニングパーティーが開催されます。
今回のインタビューは前編とし、後編はパーティー会場でショートインタビューを行います。是非、一読の上、展示をご覧いただければ。

Nam HyoJun solo exhibition “トゥエンティー・センチュリー・ボーイ” 特設サイト




はじめに、作家として活動しはじめたキッカケと今までの経歴について教えていただけますか?

幼稚園から高校まで民族学校(朝鮮学校)にて学びました。昔からクラス内で一番絵が上手だったので、自然と芸術に興味がありました。高校で美術部に入部し、どっぷりと制作を開始しました。高校卒業すると同時に東京造形大学の彫刻科に入学したのですが、あまりにも私が想像していたARTとは程遠くスグにでも退学するつもりでした。
大学生の内に海外で個展をすることで、大学を辞める理由になるなと決めてからは、上海在住で現在マネージャーである鳥本健太氏と出会い、上海で個展をすることになりました。
個展の結果は作品も売れ、上海のギャラリーに所属する事になりました。
2005年アートバブル、19歳の春です。そして大学を辞め、上海で本格的にアーティスト活動を始めました。2010年に日本に戻り、京都を拠点にアートユニット0000(オーフォー)を結成し、主にギャラリー運営、アートマネージメント、企画屋として活動していました。1年後にユニットはバラバラになり、直ぐさま私は上海に戻り、今現在になります。



毎回、アウトプットの形式が異なりますよね。その点、最適な方法を作品ごとに変えていっているのでしょうか。

テーマはナショナリズムやシンボルです。移民というバックグラウンドのため、ファンタジーの世界である朝鮮半島と、植民地を肯定するハイブリッドとしてのリアルな日本の両方からの生まれる矛盾が作品作りの冷めない熱になっています。表現形式は世の情勢次第です。変化させる事に抵抗は全くないのと、案外こだわりが無いのです。私にとっては「カフェ・オレ」も「カフェ・ラテ」も飲めるという事で同じで、条件によっては、「カフェ・オレ」を用意したり、時には「カフェ・ラテ」を出すのです。

「テーマはナショナリズムやシンボル」という点に合点がいきました。
自身の移民というバッググラウンドは作家活動を続けるにあたり、「違和感」との対峙ですか?それとも「怒り」?もしくは他の何かでしょうか。

そのようなバックグラウンドからの「違和感」「怒り」は私だけの小さな問題だと思っていたのですが、俯瞰して眺めると様々な事柄やに当てはめる事ができます。最近では韓国の美術雑誌にアパルトヘイトと私の作品を並べ論じられました。私は「怒り」よりも「共感」を望んでいます。



これまでの作家活動を通じて一気通貫して守っているものはありますか?

一貫して、目印を常に設定している事です。



FILTER PAINTINGシリーズを始めたキッカケを教えてください。

2011年12月17日に北朝鮮の指導者である金正日(キム・ジョンイル)が死去しました。完全なパラダイムシフト、天地がひっくり返ったのです。これは自由と解放を余儀なくされた瞬間です。何年後に死去する分からないが、この自由と解放の瞬間に芸術家として反応しなければいけないと準備していました。我々にとってタブーは金(キム)ファミリーの肖像画を消費する事でしたが、そのドアは今でも完全に開かれたままなのです。
本来カメラで写される事で実存は確認できるのですが、青春時代固くドアをを閉じた私には、神のように絶対的なシンボルである金正日が死去することで、私と同じく実存する人間であると気付きました。それをキッカケでFILTER PAINTINGを着想したのです。



「トゥエンティー・センチュリー・ボーイ」の被写体を選んだ理由について教えてください。

20世紀の影響力があり、既に死んでいる8人の男性です。今回発表するホテルアンテルームは日本の観光を代表する京都なので、海外から旅行客の誰しもが認識できる超有名人をバラエティー豊かに選びました。



モザイクがヘキサゴンである意味はありますか?

「我々は、どこにいるのか?」という問いは民族学校出身者には大問題のように感じています。肖像画をモザイクにする事で、近くでは単色色面を認識でき、遠くでは「顔」を認識する事が出来ます。その距離感を得るためのモザイクです。
裏から光を通すステンドグラスように絵画の全体が輝かせるためにヘキサゴンなのです。



「我々は、どこにいるのか?」という問いは非常に興味深いです。距離を計りながら像を結ぶ感覚と認識のタイミング、気付きの瞬間に何が生まれるか。象徴的(アイコン的/シンボリックな)存在を抽象的にすることで像としての存在を曖昧にしながらも像とは別な強いものが個々の作品からにじみ出ているように思います。抽象化することで得られるものはなんだと思いますか?また解像度を上げていくことで失われていくものがあるとしたらなんだと思いますか?

抽象化することで得られるものは「未来のアイデンティティや背景」
解像度を上げていくことで失われていくものは「過去のアイデンティティや背景」



政治的、もしくは宗教的な思想が自身の中でどのように変化・影響を与えていくかを自身のことでありながら冷静に見つめる視点を感じます。
国外に比べ、日本は八百万(やおろず)の神のような圧倒的シンボルではなく、分散した、それぞれの地方・地域の信仰性に派生しているように思います。それ故に日本では獲得しがたい特殊な強さをNamさんは持っているような気がしています。

私に信仰する神はありません。ルーツが朝鮮半島にあるために、そこは未開の地のようなファンタジーとしての祖国、しかし3世の私は日本生まれに本育ちのために現在生きる場所としてリアルな日本を感じます。それらの両方を信仰しているというのは変な言葉ですが、「植民地・移民」等の言葉では両方の良い所だけを眺めるものです。そして、ARTを進める上で優位ではあり強さと感じます。



上海を拠点に活動する中で日本で作家活動する点と異なる点があれば教えてください。

日本で年間200万円くらいで生きている若いアーティストは、1年間で400万円分の作品を売り切らなければいけません。しかし、これはとても困難です。国外・国内のアートフェアでは稼ぎ頭のアーティストを連れて行くのですから、所属したばかりの若手では到底出展するのも不可能です。それにアルバイトをすると制作スピードが落ちますし、そもそも急いでいないので作品を年間10点も作れないのです。1点40万円だと良いですが、6畳で作る作品はどれも小さな作品のため安いのです。6畳1Kで暮らしながら制作しても、なかなか年間400万円分の作品を作れません。それと比較し、上海は安くて早いのです。ARTの価格は世界共通の価格基準があると感じております。アパレルメーカーがミャンマーの工場で生産し、世界中で同じ価格帯で売り出すのと然程変わりは無いなという点で上海は日本より良いのです。



9月8日 “トゥエンティー・センチュリー・ボーイ” オープニングパーティーに続く…

Artist Profile

ナム・ヒョジュン / Nam HyoJun

1987 年日本国生まれの韓国人。1990-2005 年を民族学校にて学ぶ。2007 年からは上海を拠点に活動。[社会主義リアリズムの背景 と主体 ][ 東アジアの創造力 ] をテーマに、中国、韓国、日本、香港等の東アジアを中心に展覧会多数。2011 年の相次ぐ指導者の死去、 国家の破綻、革命や暴動以降は肖像画やプロパガンダ絵画を元にフィルタリングした絵画を制作。主な個展に[PARADISE FOR PEOPLE](ZEIT-FOTO SALON, 東京, 2013)[繁栄する北朝鮮現代美術](Vanguard Gallery, 上海 ,2010) 、主なキュレーションに[Shell Economics](Shanghai World Financial Center, 2F Event Circle, 上海 , 2011)
http://NamHyoJun.com/

展示概要
Nam HyoJun solo exhibition “トゥエンティー・センチュリー・ボーイ

「0000」での活躍も記憶に新しいNam HyoJunによる京都での初個展「トゥエンティー・センチュリー・ボーイ」をHOTEL ANTEROOM KYOTO内「GALLERY9.5」にて開催いたします。
今回、ポートレートシリーズの新作を発表します。被写体として選ばれた人々は20世紀に影響を与えた人物たち。
ヘキサゴンが生み出すモザイク状のポートレートは、象徴的な人物たちをより抽象的に変換していく。

会 期 : 2013年9月8日(日)〜2013年10月27日(日)
時 間 : 12:00〜19:00
場 所 : HOTEL ANTEROOM KYOTO | GALLERY 9.5
〒601-8044 京都府京都市南区東九条明田町7番
入場料 : 無料

オープニングパーティー概要
ゲスト : Nam HyoJun
日 時 : 2013年9月8日(sun)19:00〜21:00
料 金 : 無料(ドリンク・軽食はキャッシュオン)
場 所 : HOTEL ANTEROOM KYOTO Bar Lounge

Subaru Matsukura

AUTHOR

松倉 早星(Subaru Matsukura)

ovaqe inc.代表 / CNTR編集長 / MNRVファシリテーター
1983年、北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。 東京・京都の制作会社にてプランナーとして在籍。
2011年12月ovaqe inc.設立。領域を横断した多数のプロジェクトに携わる。
http://ovq.jp/
http://subarumatsukura.com/

ovaqe inc.