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第1回神戸都市デザイン賞 表彰式・記念講演

第1回神戸都市デザイン賞 表彰式にて行われたstudio-L代表の山崎 亮さんの記念講演をレポートします。

「第1回神戸都市デザイン賞 表彰式・記念講演」
日時:2月12日
場所:神戸市立博物館

記念講演
「これからの都市デザイン」

山崎 亮氏
株式会社studio-L代表取締役
京都造形芸術大学教授、空間演出デザイン学科長

1973年愛知県生まれ。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザインなどに関するプロジェクトが多い。「海土総合振興計画」「マルヤガーデンズ」「震災+design」でグッドデザイン賞、「こどものシアワセをカタチにする」でキッズデザイン賞、「ホヅプロ工房」でSDレビュー、「いえしまプロジェクト」でオーライ!ニッポン大賞審査委員会長賞を受賞。共著書に「都市環境デザインの仕事」「マゾヒスティック・ランドスケープ」「震災のためにデザインは何が可能か」「テキストランドスケープデザインの歴史など」(引用元:「コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる」山崎亮著 学芸出版社)

著書
「コミュニティデザイン」人がつながるしくみをつくる


【コミュニティデザインの基礎】
もともとランドスケープデザイナーとして活躍していた山崎さん。
パークマネジメントの仕事を通じて
“モノの形をデザインする仕事”から
“人と人がつながる仕組みをデザインすること”へとシフトされました。
パークマネジメントから街全体のマネジメントへ、
さらにその街の人達と統合計画の制作というところまで繋がることになります。
全体を通して「Community Based」という、
その場にいる人達と共に街づくりを進める意識が、
コミュニティデザインの基礎的な考え方となります。

【神戸都市デザイン賞について】
増えすぎた人口を収容することが正義とされた「アーバンデザイン」が20世紀型。
世帯数が減少するなかで、単に拡大だけが目標でなく、
社会に貢献するデザインが都市に集約されたモデル、
文化としての建築という側面も踏まえたうえでの変化。
これこそが21世紀型の都市デザイン。
神戸都市デザイン賞は、単にカッコいい、新しい、
お洒落というような表層的なデザインだけではない、
考えるきっかけとしての都市デザインとして好評価されています。

【デザインの本来の意味】
“デザイン=デコレーションではない”
この二点の決定的な違いは、そこに課題解決の要素が含まれているかいないかです。

De <脱する> – sign<記号的な美しさ>
単なる記号的な美しさを一脱し、物事や課題の本質までを読み解き、
共感を得たうえで美しく解決する。

本来デザインとは、産業革命の時代は社会課題解決のための
デザインとして存在してました。
その後の経済拡大の中、消費サイクルとしてのデザインとして都合良く取り込まれてしまいました。
そして経済の拡大も止まり、モノが売れなくなってしまった現代、
もう一度産業革命の時代のデザインに振り返る必要があるのではないかと、
おっしゃっていました。

[参考]
・工業都市グラスゴーの課題(都市設計のミスと病気の流行)に対してのデザインによる課題解決の提示。ウィリアム・モリス。
・ル・コルビジェのデザイン(課題解決による改革 → 売れるデザイン → 売れる情報という誤った流れ)


問題に対してデザインは何ができるのか?
鬱に対してデザインは何ができるのか?
地震に対してデザインは何ができるのか?
集落に対してデザインは何ができるのか?
高齢化に対してデザインは何ができるのか?
自殺に対してデザインは何ができるのか?

たとえ小さな事例であってもそこにはデザインの本質があります。
そして19世紀のデザインを見返れば、現代の社会課題を
どのように考えるべきか見えてくるのではないでしょうか?


【コミュニティデザインについて(コミュニティデザインの歴史)】
世界で初めてと思われたコミュニティデザインという仕事ですが、
実は昔からコミュニティデザインの概念は存在していたようです。

1960年代(コミュニティデザイン第一世代)
さまざまな人が集まるニュータウンで、ハード面の設計(集合住宅やプラザ)からコミュニティを発生させた。

1980年代(コミュニティデザイン第二世代)
公共施設を作るときに、そこに住むコミュニティの意見を聞く、市民参加型での街づくり。

2000年代(コミュニティデザイン第三世代)
ハードとしての公共事業の減少により、モノの形のデザインではなく、状況のデザイン。
村や市街地、デパートや大学など、さまざまな場所で人と人とがつながる仕組みをデザインすることが重要視されるようになった。

ハードの設計が終わり、その後も自発的に人々が行動を起こすのを見つめるなかで、
山崎さんは、設計案件のために人が集まるのではなく、地域を良くするために人が集まることから、街を楽しくすることもできるのではないか?
設計をしなくてもデザインと呼べるのではないか?
そう考えるようになりました。


【これからの都市のデザイン】
公共空間のおかげで支えられていた地域コミュニティ(自治会、商店街、町内会、老人会などさまざまな団体、縁日や盆踊りや祭りなどのイベントを開催)は時代と共に拡散化・減退し、空間の使用頻度も低下してしまいます。
これからは、テーマ型で自治体や大学、地域の人達が集まれるような仕組みを作ることが大事なのではないか。
<地域コミュニティの弱体化> → <テーマ型コミュニティの形成> + <物理的な公共空間の美しさ>
その中には、先ほどあった社会課題の解決というテーマも含まれているのかもしれません。

このような状況になるためには、しかるべき仕掛けが必要。
そのために行政は何をすべきか?
土地所有者・事業者は何をすべきか?
コーディネートするNPOやコミュニティデザイナーは何をすべきなのか?
これらすべての関係性がウィンウィンになっていくよう仕組みを作っていくことが
これからの世の中、そして都市デザインには重要だということです。


【CNTR聴講後記】
情熱大陸と著書「コミュニティデザイン」を見て非常に感銘を受けていたので、今回の講演はとても勉強になる内容でした。
主に本の内容をベースに事例をお話されるのかなと思ったのですが、
デザインの歴史から、これからの都市デザインにおけるコミュニティデザインの役割、
そして課題解決のためのデザイン。
曖昧とされていたデザインの役割を、今一度、産業革命の時代のデザインを振り返りながら、見つめ直してみることが重要で、
「答えはそこにあった」的なことかもしれないなと思いました。
まだまだ勉強が必要ですね。

Kenji Maeda

AUTHOR

前田 健治(Kenji Maeda)

Art Director / Designer
1984年大阪生まれ 京都育ち。ZOOMDESIGN退職後、2012年にmémを設立。コンセプトワークからブランディング・グラフィックデザイン・デジタル分野まで、さまざまな領域でのデザインを手がける。
http://www.m-e-m.jp/

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